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映画【ブレインデッド】あらすじ&感想「激レアゾンビ映画」

今や『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』といった大作映画の監督として名高いピーター・ジャクソン監督が、若手時代に撮ったスプラッターホラーの名作と評価されている『ブレインデッド』。

この作品はマニアからの評価の割に、国内では2002年ごろに発売されたDVD以来再販されたソフトがないらしい。

最近では高騰しているネット通販(Amazonで現在8000円〜)以外ではまず見かけることすらできません。

私は数年前からずっと(それほど熱心にではないものの)この作品のDVDを探していました。

数ヶ月前に収蔵数の多いTSUTAYA渋谷店の遺産(レガシイ)コーナーに一枚だけ貴重な在庫があることを知ったのですが、やはり人気らしく訪ねるたびに貸出中の日が続きました。

そして何度も通う内にある日、運良く返却されていてようやく鑑賞することができました。

ところでやっと鑑賞できるということに大変感慨深いものがあったのですが、考えてみるとこれから先は作られる映画のほとんどが配信サービスで観られるようになります。

一つの作品のソフトを求めてここまで苦労することもなくなっていくのだろうなと妙な寂しささえ覚えますね。

ブレインデッドの情報

ブレインデッド:1992年 103分

監督

  • ピーター・ジャクソン

脚本

  • ピーター・ジャクソン
  • スティーブン・シンクレア
  • フラン・ウォルシュ

出演

  • ティモシー・バルム
  • エリザベス・ムーディ
  • ダイアナ・ペニャルヴァー ほか

ブレインデッドのあらすじ

遠い国からニュージーランドへ「ラットモンキー」という奇妙な動物が密輸されてくる。

子離れできない過干渉気味の母親に悩まされている青年ライオネルは、雑貨屋で働く女性パキータと出会い、親しくなる。

二人は動物園に遊びに行くが、なんとそこには密輸されたラットモンキーが飼育されていた。

二人を尾行し、遊園地まで来ていたライオネルママはラットモンキーに噛まれてしまう。

噛まれたママの体には異変が起こり、皮膚が崩れ、よくわからない液体を吹き出し、ついにはゾンビ化する。

ライオネルは仕方なくゾンビ化したママを家に匿うが、家を訪ねる人々が次々とママに襲われ、彼らもゾンビに変化。もはや収集がつかなくなってしまう。

そんな危険地帯に、ママの家と財産を狙うライオネルのあくどい叔父が大勢の人々を連れて無防備にもパーティーを開こうとやってくる…。

ライオネルは惨劇を生き延び、パキータと結ばれることができるのか。

ブレインデッドの感想

クマゾンビ
クマゾンビ
もっとも汚いゾンビ映画だ!(いい意味でね)
イタリアン
イタリアン
汚いって…観るのに勇気がいりそう…。

 

まず、この作品の何よりも強い印象は「今まで見たゾンビ映画の中で最も汚い映画」であるということ。

ゾンビ化したママから文字通り吹き出てくる謎の汁。殺戮シーンにおけるスプラッター映画でも他に見ないレベルの大量の血液。

シーン次第で豆腐のような強度になる人体は、ゾンビによって簡単にちぎられ、内蔵がこぼれ落ちます。ゴア度はかなり高いと思います。

かといって恐ろしくてたまらないホラー映画なのかと問われればそうではなく、この作品はむしろ上質なコメディ映画のようです。

主人公ライオネルの行動は異常事態においても妙にのんきで、シリアスさを欠いています。

シャレにならない程に連続する、無駄に凝ったグチャグチャなシーンはもはや笑うしかない(矛盾しているようですが”シャレになってしまう”)域に達していて、ピーター・ジャクソン監督もそれを狙っているように思われます。

歌舞伎にも凄惨な殺しのシーンをハイライトとするような演目があり、それを観客が楽しめるのはそのシーンをシリアスな殺しとしてではなく、「仕掛けもの」としての工夫やトリックの演出を楽しむ場面として観ているからだ、という話を聞いたことがあります。

 

『ブレインデッド』においてもその傾向は顕著です。特に目を引くのが上映時間の3分の1程を占める圧巻のクライマックスシーン。

ここでは、ニュージーランドらしく(?)ライオネルが使い慣れた芝刈り機によるゾンビ刈り(後にゲーム『デッドライジング』でオマージュされています)を披露。

電球を顔にぶち込まれ発光し続けるゾンビ、ライオネルを襲う「意思を持って自律行動する動力不明の内蔵」など、いかに工夫をこらし小道具やセットを絡めてバリエーション豊かに(バカバカしく)人間とゾンビを殺すかという「殺し大喜利」的な場面が延々と続きます。

このシークエンスは一見の価値ありです。

それぞれの殺しシーンでは特殊メイクやストップモーションアニメを駆使した過剰なまでに凝った映像演出が見られ、監督の映画愛、特撮愛を存分に味わうことができます。

こうした映像への強いこだわりが後に『ロード・オブ・ザ・リング』のような大作を監督することに繋がっていくのがうかがえて興味深い。(似たような例としては『スパイダーマン』のサム・ライミ監督や今春公開される『アクアマン』のジェームズ・ワン監督なども低予算ホラー時代から非常に凝った映像を追求していますね。)

 

この映画に漂うコミカルな雰囲気を支える、登場人物の行動ものんきが過ぎるというか完全に常軌を逸しています。

ライオネルはゾンビ化したママを殺さないどころか、訪ねてきた客人と会わせて彼らに料理を振る舞ってしまうし、「赤ちゃんゾンビ」(パッケージにも登場していて超印象的)が誕生すると、今度はなぜか乳母車に乗せ公園デビューを果たし、そこで大暴れする赤ちゃんゾンビに振り回される完璧なコントを見せてくれます。

他にもゾンビを突然素手で葬り去り出す神父や、最後には完全なクリーチャーと化してしまい、それでもなおライオネルへの偏愛が暴走し続けているママなど強い印象を残すキャラクターたちがこの映画には溢れています。

本作は本当にゴアシーンが多いので万人におすすめできる映画とは言いかねますが、決して不条理に悪趣味なシーンを流し続けるような作品ではありません。

観客を楽しませようとする一心で悪趣味なシーンをたれ流す、エンターテイメント性に富んだエネルギーを持った名作です。

低予算スプラッターで描ける限界に挑むような演出の数々は映像作品としての見ごたえがあります。

また、怖さ自体はほとんど無いので、ホラーが苦手でも大量の血や内臓が大丈夫という方にも安心しておすすめできると思います。

 

ところで知名度の割にこれほどまでに国内版DVDが品薄であるのには、北米版ソフトには(意外にも)一部カットされたゴアシーンがあり、完全版といえるのが日本版ソフトであること、そしておそらくそのアクの強い描写から国内でも再販するにしづらいといった背景が一因となっているようです。

オタク気質のピーター・ジャクソン監督が若い頃ノリノリで撮ったであろう作品をなかったことにしたいとも言わなそうだし、一刻も早い再販が望まれてなりません。

出したらすぐ売れると思うんですけどね。

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